「この仕事、自分がやった方が早いし、確実なんだけどな…」
リーダーであるあなたは、そう思って、つい部下の仕事を取ってしまった経験はありませんか?
かくいう私も、昔は「自分がやった方が早い」が口癖の、典型的なプレイングマネージャーでした。今日は、そんな私自身の過去の痛い失敗談を通して、「人に任せる」ことの本当の意味について、皆さんと一緒に考えていければと思います。
良かれと思ってやったのに…僕の「正義」が職場を壊した日
あれは、私がまだコンサルタントとして独立する前、会社で総務課長をしていた頃の話です。
当時の私は、部下である事務員さんたちの仕事のやり方が、気になって仕方がありませんでした。「もっとこうすれば効率的なのに」「なぜ、この手順でやらないんだ…」と。
もちろん、悪気があってのことではありません。自分のやり方を教えることが、彼女たちの成長のためであり、チームの生産性を上げることにつながる。それが良いリーダーシップなのだと、本気で信じ込んでいたのです。
しかし、現実はまったくの逆でした。
私が細かく口を出し、自分のやり方を押し付ければ押し付けるほど、職場の空気は重くなり、活気は失われていきました。そして、ある日を境に、一人、また一人と…事務員さんたちが会社を辞めていってしまったのです。
わずか半年で、4人も。
現場は大混乱に陥り、残ったメンバーには当然、大きな負担がかかります。私自身もその対応に追われ、文字通り途方に暮れました。まさに「どん底」でしたね… 。
なぜ、こんなことになってしまったんだろう。
良かれと思ってやっていたのに、何が間違っていたんだろう。
頭が真っ白になり、自分を責めました。そんな時、退職した一人が最後にポツリと言ってくれた一言が、今でも私の胸に突き刺さっています。
「課長は、私たちのことを、信用してくれていないんですね」
頭をガツンと殴られたような衝撃でした。
私の行動は、彼女たちから「自分で考えて仕事をする」という主体性を奪い、「どうせ何をしても、課長に否定される」という無力感を与えていただけだったのです。
人は変えられない。変わるべきは、いつだって自分だった。
部下4人の連続退職という、本当に手痛い失敗。
しかし、この経験が、私に自分自身と深く向き合う時間を与えてくれました。
「権限を委譲する」、つまり「任せる」ということは、単に仕事を割り振ることではないのだと。
それは、相手の力を…その人の可能性を「信じて、待つ」ことなのだと、この時、心から理解したのです。
そこから、私は自分自身を変えることから始めました。
- 部下のやり方を頭ごなしに否定しない。
- たとえ時間がかかっても、少し遠回りに見えても、最後までじっと見守る。
- 結果だけでなく、「ここまで頑張ったんだね」とそのプロセスをちゃんと認める。
- こちらから手を出すのは、相手から「助けてください」と言われた時だけにする。
正直、最初はもどかしくて仕方ありませんでした(苦笑)。
でも、そこをぐっと堪えて見守り続けるうちに、チームに驚くような変化が起きたのです。
新しく入ってきた事務員さんたちが、自ら考えて、工夫して仕事を進めるようになったのです。チームの中に活発な会話が戻り、何より、誰も辞めなくなりました。定着率が、劇的に改善した瞬間でした。
「任せる」とは、テクニックではなく「覚悟」である
この経験を通して、私が確信したことがあります。
それは、「人は変えられない。変わることができるのは、いつだって自分だけ」だということです。
部下が育たない、チームがうまく機能しない…その原因を、私たちはつい周りのせいにしてしまいがちです。でも、あの時、彼女たちが辞めていったのは、決して彼女たちの問題ではありませんでした。彼女たちを信じることができなかった、私自身の問題だったのです。
結局のところ、権限委譲は、経営の小難しいテクニックや技術ではありません。
部下や仲間を「信じ抜く」という、リーダー自身の「覚悟」の表れなのだと、私は思っています。
リーダーが本当にやるべきこと。それは、メンバーの仕事を一つひとつ管理することではありません。
メンバーが安心して挑戦でき、たとえ失敗したって、再チャレンジできる。そんな空気感、土壌を作ること。そしてリーダー自身は、チームが向かうべき少し先の未来を描き、その舵取りをすることです。
もし今、かつての私のように、すべてを一人で抱え込んでしまっているなら、思い出してください。
あなたの周りには、あなたと共に未来を創る仲間がいるはずです。
その仲間を信じて、「任せてみる」。
その一歩が、きっとチームを、そしてあなた自身を救うことになります。
もちろん、言うは易く行うは難し、ですよね。もし一人で悩んでいるなら、いつでも私に声をかけてください。痛い失敗を経験した私だからこそ、あなたの「経営参謀」として、心から寄り添えることがあるはずです 。
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