管理者の3方向の責任でチームを動かす方法

人事労務

はじめに

「会社が倒産した直後、離職票を 281枚 発行しなければならない――。途方に暮れていた私の前に、かつての部下たちが自発的に集まり、笑いながら深夜まで作業を手伝ってくれました。」

この出来事は、部下との信頼がどれほど管理者自身を救うかを教えてくれました。ドラッカーが示した 上司・企業全体・部下 の3方向の責任を実践していたからこそ得られた“恩返し”だと、いま確信しています。本稿ではこの3方向の責任を、実務でどう落とし込むかを解説します。


上司への責任──上位目標を“翻訳”する

ゴール共有ミーティング3ステップ

  1. 聞く – 上司から部門目標の背景と期待を徹底ヒアリング
  2. 翻訳する – 自部門・個人タスクに置き換え、数値と行動にブレイクダウン
  3. 確認する – 上司に「これでギャップはないか」を再確認

ポイント:目標の“翻訳漏れ”があると、部下は全力を出しても評価につながらず士気が下がる。翻訳の精度こそが上司への最大の貢献。

目標摩擦を解消するフィードバック例

  • 事実ベース:「進捗が20%遅れています」
  • 要因共有:「ボトルネックは外注先納期です」
  • 提案:「納期短縮交渉と平行してプランBを準備します」

企業全体への責任──部分最適のワナを超える

コスト削減 vs. ブランド価値:製造現場のジレンマ

製造部門が部品品質を下げれば短期コストは下がる。しかしサポート部門へのクレーム増・ブランド毀損で、長期的には全社損失。管理者は「自部門で完結しない影響」を数値で示し、決裁者に選択肢を提示する役割を担う。

横串プロジェクトのススメ

  • 小さく始める:他部門と週1の改善ミーティングを設置
  • 共通KPI:部門をまたぐ指標(例:リードタイム全社平均)を設定
  • 成果公開:社内チャットで進捗を可視化し、参加者を巻き込む

部下への責任──1on1で潜在力を引き出す

面談で必ず聞く3つの質問

  1. 前回挙がった課題は、その後どうなった?
  2. 仕事や健康状態の調子はどう?
  3. やってみたい仕事・異動希望はある?

私は毎月1回、4人の部下と必ずこの3点を話しました。希望を聞いて実際にプロジェクトにアサインすると、挑戦意欲が高まり、“上司のため”ではなく“自分の成長のため”に働く循環が生まれます。倒産後に彼らが助けてくれたのは、この信頼の積み重ね以外に理由は考えられません。

好循環を仕組み化する

  • 挑戦機会をリスト化:小さなタスクでも「トライ枠」を常に用意
  • 成果共有:成功・失敗をチームでナレッジ化し、挑戦を称賛
  • 上司自身も振り返る:1on1の気づきを週報にまとめ、次回に活かす

まとめ

ドラッカーの示した3方向の責任は、単なる理論ではなく“人と組織を動かす実務のレバー”です。

  • 上司への責任:目標を正確に翻訳し、摩擦を潰す
  • 企業全体への責任:自部門の利益より全社の持続的利益を選ぶ
  • 部下への責任:1on1で潜在力を引き出し、信頼を資産化する

この3つが噛み合えば、上司も企業も部下も、相互に助け合う強い組織へ進化します。


次の一歩──来週までに“最初の1on1”を組んでみよう

  1. 時間を確保する
  • 今日中にカレンダーで〈30分〉確保し「○○さんとの1on1」と入力。
  1. 面談シートを準備(10分)
  • 上記3つの質問をメモに書き出す。
  1. 前日の最終チェック
  • 面談前日に前回の記録を確認し、明日の面談で必ず聞くことを決める。
  1. プロに相談したいときは
  • 「質問の深掘りに自信がない」「フォーマットを見てほしい」――そんなときは、おおもと経営オフィスの無料経営相談へ。面談設計から実施後のフォローまで直接サポートします。
  • ▶︎ 申し込みはこちら → https://oomotokeiei.jp/freeconsultation/

さあ、最初の1on1を設定して、3方向の責任を“行動”に変えてみてください。

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この記事を書いた人
おおもと経営オフィス 代表
大本 佳典

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は20,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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