はじめに
20代前半の頃、私は自動車リース会社で営業マンとして働いていました。上司の櫻井課長(仮名)はいつも私に自由にやらせてくれる人で、そのおかげ?で多くの失敗を経験しました。今でも赤面するほど鮮明に思い出す失敗のひとつが、取引先に車両管理の重要性を説教じみた口調で指摘した時のことです。
報告を聞いた課長はただ一言、「そうか」とだけ言いました。その後、私が知らない間に、課長は取引先に直接電話をかけて、私が失礼な態度を取ったことについてフォローをしてくれていました。当時はなぜ叱責されなかったのか不思議でしたが、後になって気づいたのです。課長は部下である私を信じ切り、私の失敗の責任を自ら引き受けてくれたのだ、と。
「責任」と「権限」の本質とは?
ドラッカーが語る本質:「決定する権利」と「実行する義務」
ピーター・ドラッカー先生は、「責任」と「権限」を『1つの仕事の2つの側面』として捉えました。「責任」は果たすべき義務、「権限」はその義務を果たすための権利や自由です。重要なのは、この二つが密接に結びつき、『決定する権利』と『実行する義務』として適切なバランスで存在することなのです。
責任だけ与えられて権限がなければ、部下は萎縮し、自主性も創造性も失われます。一方で、権限だけ与えて責任が伴わなければ、組織は無秩序になります。
日本企業に見られる「責任」と「権限」の課題
責任だけを押し付けられた部下はどうなるか?
「成功は上司の手柄、失敗は部下の責任」という構造が、日本の一部企業や特定の場面で見受けられることがあります。これは極端なケースですが、こうした環境では部下が失敗を恐れて挑戦を避け、やがて組織は停滞します。
責任を取らない上司は、実際には何も決定していないことに等しく、組織に不信感と無気力を蔓延させる結果につながります。
部下を信じ切る覚悟が組織を伸ばす
私が櫻井課長から学んだ、上司としての覚悟
冒頭のエピソードで紹介した櫻井課長の行動を、もう少し詳しくお話しします。
課長は、私が取引先に対して起こした失敗を叱責しませんでした。それどころか、私の知らないところで取引先へ電話し、「担当者が熱心に指摘してしまいましたが、どうぞお気を悪くなさらずに」と丁寧なフォローを入れてくれていました。私がのちにそのことを知ったとき、課長の器の大きさに感動しました。
課長が私を叱らなかった理由は明白です。課長は、失敗をしても部下が成長できるように、部下の責任を自分が引き受ける覚悟を持っていたのです。そのおかげで私は、営業活動を自分の裁量で試行錯誤しながら実行し、数多くの貴重な経験を積むことができました。
上司が実践すべき、責任と権限配分3つの原則
部下を成長させるためのリーダーの姿勢
上司が部下を育成し、組織を伸ばすためには次の3つの原則を実践する必要があります。
- 信頼を前提とした明確な権限委譲をする
- 部下が自ら判断できる範囲を明確に示すことで、自主性を育てます。
- 上司が部下の責任を自ら引き受ける覚悟を持つ
- 上司が失敗の責任を引き受けることで、部下は安心して挑戦できます。
- 部下の自主性やチャレンジを許容する
- 小さな失敗を成長の機会として認め、積極的に挑戦する文化を作ります。
まとめ:「信じ切る」ことで強くなる組織へ
社長が部下を信じ切り、責任を自ら引き受ける覚悟を持つことが、組織の健全な成長を促します。挑戦に対して寛容な環境を整えることは、結果として組織全体の挑戦力、創造性、そして長期的な競争力につながります。
部下を信じ、責任を引き受ける――それは簡単なことではありません。しかし、組織を成長させる上でこれほど大切な覚悟は他にありません。
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