「見たくないもの」に蓋をし続けた日々

経営相談

「まあ、まだ大丈夫だろう」
「そのうち、時間ができたらやろう」

かつて専務だった頃の私は、この言葉を魔法のように唱え、目の前の厄介な問題から逃げ続けていました。それは、ある特定のベテラン社員の問題でした。彼は長年の功労者である一方、その言動が少しずつ、確実に、周りの若手社員たちの士気を削いでいたのです。

報告は受けていました。現場からも、不満の声が聞こえてきていました。
頭では分かっているのです。彼と向き合い、厳しい話をしなければならない、と。

しかし、私はその決断を先送りし続けました。
功労者である彼との対立は、想像するだけで気が重い。もっと他にやるべき緊急の仕事があるじゃないか。そう自分に言い訳をしては、その問題が書かれた付箋の上に、別の「緊急の」タスクの付箋を貼り重ねるような日々でした。

見たくないものに蓋をする。
それは一時的な心の安らぎにはなりますが、問題そのものは、蓋の下で静かに、しかし着実に腐敗していくことを、当時の私はまだ知りませんでした。

問題が「利息」をつけて膨れ上がっていく恐怖

問題というのは、放置すればするほど「利息」がつくものだと、私は身をもって知ることになります。

初めは、若手社員数人の不満でした。しかし、私が何もしないでいるうちに、その不満は部署全体へと伝染し、優秀な若手が一人、また一人と会社を去っていくという最悪の事態を招いたのです。

辞めていく彼らの本当の理由に気づきながらも、私は向き合うことができませんでした。
辞めるはずのなかった社員の退職。下がり続けるチームの生産性。日に日に重くなっていく社内の空気。

「まだ大丈夫」だったはずの問題は、気づいた時には、会社の根幹を揺るがす巨大な怪物へと姿を変えていたのです。
あの夜、一人事務所で感じた、得体の知れない焦りと恐怖の感覚を、私は今でも忘れることができません。

今すぐやるべきは、一番やりたくない仕事

結局、手遅れになってから、私はその問題の処理に追われました。
しかし、その時にはもう、失った信頼も、去ってしまった社員も、戻ってはきませんでした。
もっと早く、ほんの少しの勇気を出して、あの「一番やりたくない仕事」に取り組んでいれば、こんな結末にはならなかったはずです。

この手痛い失敗から、私は一つ学びました。
それは、「経営者が今日やるべき最も重要な仕事は、往々にして、最も手を出したくない仕事である」ということです。

気が重い話し合い。難しい資金繰りの判断。不採算事業からの撤退。
そういったものから目を背けたくなる気持ちは、痛いほど分かります。
しかし、その「やりたくない仕事」にこそ、会社の未来を左右する鍵が隠されているのです。

あなたの机の上にも、見て見ぬふりをしている付箋が、貼ってありませんか。

一人で抱え込んでいる「一番やりたくない仕事」を、経営参謀と一緒に片付けませんか


ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。

▼ あなたが「見て見ぬふり」をしているその問題が、1年後、あなたの会社にどれだけの「利息」を請求してくるでしょうか?

サムネールは ChatGPT で作成しました。

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この記事を書いた人
おおもと経営オフィス 代表
大本 佳典

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は30,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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