「利益という名の、麻薬に溺れていた」

先日、ある経営者の先輩と、久しぶりに酒を酌み交わしました。
今でこそ、社員想いの温厚な社長として知られる彼ですが、その口から語られたのは、壮絶な過去の失敗談でした。

「昔の俺はね、おおもっちゃん。利益こそが全てだと、本気で信じていたんだよ」

当時の彼の口癖は、「理念なんかで食えるのか?」。
朝礼で語るのは、ビジョンや社会貢献の話ではなく、今月の売上目標だけ。
とにかく、数字を作れる人間が偉い。プロセスがどうであれ、儲けた人間が正義。
そんな価値観を、社内に徹底していたそうです。

利益が出れば、社員に高い給料で報いる。
それで社員は満足し、会社に尽くしてくれるはずだ。
彼は、そう信じて疑いませんでした。
お金というわかりやすい報酬が、社員の心を繋ぎ止める唯一の鎖だと、本気で考えていたのです。
その考えが、いかに脆いものだったかを「運命の日」にわかったそうです。

船が沈み始め、乗組員が逃げ出していく

順調に見えた会社に、突然の嵐が訪れます。
大口の取引先が倒産し、会社のキャッシュフローが一気に悪化したのです。

彼は、社員たちに頭を下げました。
「会社が大変な状況だ。今こそ、みんなで一丸となってこの危機を乗り越えたい。力を貸してくれ」と。
しかし、その言葉に、社員たちの心は動きませんでした。

それどころか、これまで会社のエースとして高給を得ていた社員たちが、真っ先に「沈みゆく船」から逃げ出していったのです。
ある者は、ライバル会社へ転職し、ある者は、顧客リストを手に独立した。
残った社員たちも、どこか他人事で、定時になればさっさと帰っていく。
必死に会社を立て直そうと奔走する彼の周りには、いつしか誰もいなくなっていました。

彼は、その時の絶望をこう語ってくれました。
「俺は、チームを作っていたんじゃなかった。ただ、金で動く傭兵集団を率いていただけだったんだ」と。
理念やビジョンという旗印がなければ、人は同じ方向を向けない。
順調な時は良くても、船が嵐に見舞われた瞬間、乗組員は自分の救命ボートを探し始めるのです。

儲け話より、夢を語れるリーダーになる

どん底の中で、彼は全てを失い、そして最も大切なことに気づきました。
会社にとっての「魂」の重要性です。

彼は、会社をたたむ寸前で、残ってくれた数少ない社員たちと、膝を突き合わせて語り合ったそうです。
「俺たちは、何のためにこの会社をやっているんだろう?」と。
それは、儲け話ではありませんでした。
自分たちの仕事を通じて、どんなお客様を笑顔にしたいのか。どんな社会を実現したいのか。
そんな、青臭いと笑っていた「夢」の話でした。

そこから、彼の会社は少しずつ再生していきます。
新しい理念に共感してくれる仲間が集まり、嵐の中でも決して離れない、本当の「チーム」が生まれたのです。

先輩の話を聞きながら、私は胸が締め付けられる思いでした。
利益は、会社を動かす血液です。しかし、理念やビジョンは、その血液を全身に送り出す、熱い心臓なのです。
彼の失敗談は、私にそのことを改めて教えてくれました。

あなたの会社は、何のために存在しますか?利益の先にある「会社の魂」を、経営参謀として一緒に見つけ出すお手伝いをします


ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。

▼ もし、社員全員に「うちの会社が、給料以外に提供できる価値は何ですか?」と尋ねたら、彼らはすぐに答えられるでしょうか?

サムネールは ChatGPT で作成しました。

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