熱く語る私と、白けていく会議室の空気
「会社の未来はこうあるべきだ！」「この戦略で俺たちは絶対に勝つんだ！」
かつての私は、会議室でよくこう叫んでいました。自分では、会社の進むべき道を示し、社員を鼓舞しているつもりでした。全身全霊で、自分の持つ情熱のすべてをぶつけているつもりだったのです。
しかし、ふと見渡した会議室の光景に、私はいつも愕然とさせられました。必死に語る私とは対照的に、社員たちの目は虚ろで、明らかに白けている。「また専務の独演会が始まったよ」…そんな心の声が聞こえてくるような、重たい空気がそこにはありました。熱意を伝えれば伝えるほど、社員たちの心は冷めていく。会社を前に進めようとすればするほど、自分だけが空回りしているような感覚。組織の中で、自分がどんどん孤立していくあの恐怖を、今でもはっきりと覚えています。
「伝えたつもり」と「伝わっている」の間にある、絶望的な溝
なぜ、私の想いは届かないのか。当時はその理由が全く分かりませんでした。俺はこんなに本気なのに、なぜ誰もついてこないんだ、と。しかし今なら分かります。当時の私がやっていたのは、コミュニケーションではなく、一方的な「指示」や「命令」でしかなかったのです。私はただ、自分の考えを社員に「伝達」していただけでした。
彼らがそれをどう受け止め、何を感じ、どんな不安を抱えているのか。そのことに、一切思いを馳せることができていませんでした。自分では「伝えたつもり」でも、相手には全く「伝わっていない」。その間には、経営者が思うよりもずっと深く、絶望的な溝が横たわっているのです。その溝の存在に気づかない限り、トップは裸の王様になり、孤独に苛まれ続けることになります。人を大切にしない経営が、いかに脆いものか。私はそれを、身をもって痛感しました。
孤独な王様にならないために、私が始めたたった一つのこと
どん底を味わい、自分が孤独な王様だったと気づいた私が始めたこと。それは、実にシンプルなことでした。ただひたすらに「聴くこと」です。自分が話す時間を半分、いや、それ以下にして、社員一人ひとりの声に、真剣に耳を傾けることにしたのです。
最初は、何を話していいか分からないような、気まずい空気が流れました。しかし、それでも諦めずに「会社のこと、どう思う？」「何か困っていることはないか？」と問い続け、彼女らの言葉を遮らず、否定せず、ただただ受け止める。それを繰り返すうちに、凍りついていた関係性が、少しずつ溶け出していくのを感じました。一方的な「伝達」をやめ、双方向の「対話」を始めたとき、初めて私は孤独から解放され、本当の意味での「経営参謀」を社内に得ることができたのです。
もし、あなたが今、かつての私のように「なぜ誰もついてこないんだ」と孤独を感じているのなら。その熱い想いが本物だからこそ、一度立ち止まってみませんか。扉を開ける鍵は、あなたの外にはありません。すべては、あなたの内側と、目の前にいる社員との間にあります。
「誰もついてきてくれない…」その孤独、私に話してみませんか？あなたの伴走者となる経営参謀サービス
ビジネスコーチ大本から、今日のコーチングです。
▼ あなたのその『熱意』は、社員にとって希望の光ですか？それとも、息苦しいだけのプレッシャーですか？
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