真面目で、責任感の強い経営者ほど、会社を良くしようと必死で仕組み作りに奔走します。就業規則を整え、評価制度を作り、管理体制を強化する…。一つひとつは、会社にとって間違いなく「正しい」ことのはず。
それなのに、なぜでしょう。社員たちの顔は晴れず、むしろどこか窮屈そうで、職場には活気よりも静かな諦めが漂っている。そんな経験はありませんか。その努力が空回りしているような、やるせない感覚。その気持ち、私には痛いほどよく分かります。
ピカピカに磨かれた皿と、冷え切った食卓
かつての私も、必死でした。会社を立て直すため、とにかく管理を徹底し、ルールを完璧にすることに心血を注いだ時期があります。でも、結果として社員の心が動くことはありませんでした。むしろ、離れていったようにさえ感じます。後になって気づいたのは、私がやっていたことのほとんどが、不満や問題を未然に防ぐための「守り」の施策だったということです。
経営学者のドラッカーは、こうした仕事を「皿洗い」に喩えました。やらなければ家庭は破綻しますが、いくら皿をピカピカに磨き上げたところで、それだけでは幸福な結婚生活は訪れない、と。完璧なルールは、冷え切った食卓に並ぶ、ただピカピカな皿と同じだったのです。
ルールブックを閉じて、社員の顔を見てみよう
では、どうすれば社員の心に火を灯せるのか。それは「守り」から「攻め」への視点転換です。「これをやらなければならない」という規律ではなく、「これをやりたい」という内なる意欲をどう引き出すか。
その答えは、分厚いルールブックの中にはありません。経営者である、あなたの言葉の中にあります。この会社はどこへ向かっているのか。私たちは社会にどんな価値を提供したいのか。そして、社員一人ひとりの仕事が、その大きな未来とどう繋がっているのか。
それを、自分の言葉で、情熱を持って語りかける。そして、彼らの声に真摯に耳を傾け、共に未来を創っていく「伴走者」になる。必要なのは、管理ではなく「対話」なのです。
あなたの隣で、一緒に未来の話をしたい
完璧な仕組みを求めて、たった一人で戦っていませんか。その孤独な努力は、決して無駄ではありません。ただ、そのエネルギーのほんの少しを、社員の顔を見て、彼らの話を聞く時間に変えてみてほしいのです。
一見、遠回りに思えるかもしれません。でも、人の心を本当に動かすことができるのは、いつだって人の心だけです。私もかつて「正しい」ことばかりを追い求めて失敗し、どん底でその事実に気づかされました。だからこそ、今、同じように悩むあなたの「経営参謀」として、隣に座って一緒に未来の話がしたい。そう心から願っています。
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