多能工化で人材不足を乗り越える!従業員が安心して休める職場づくりの秘訣

人事労務

はじめに

「人が足りない」「休みが取りづらい」──。中小企業の経営者や管理職の方が、常に悩まされている課題ではないでしょうか。人材不足が進む中で、限られた人数で業務を回し続けるにはどうすればいいのか。そんな状況を打開するキーワードとして注目を集めているのが、多能工化です。実は、多能工化は単なる“人手不足対策”にとどまらず、従業員のモチベーションやスキルアップにも大きく寄与し、最終的には組織全体の生産性向上につながります。

本記事では、新潟県の古民家ホテルの事例と、筆者がかつてタクシー会社の総務部長として実践した「誰でも休みやすい職場づくり」の経験談も交えながら、その具体的なメリットと進め方をわかりやすくご紹介します。


多能工化がもたらすメリットとは

多能工化の基本的な考え方

多能工化とは、一人が複数の職務やスキルを兼任し、多面的に働くことを指します。たとえば、ホテルでは「フロント業務+朝食づくり+地元文化の案内」など異なる業務を組み合わせることで、個々の従業員が幅広い領域で活躍する仕組みをつくります。

  • 人材不足の緩和:限られた人数でも幅広い業務をカバーできる
  • 従業員の成長と定着率アップ:学びの機会が増え、自己肯定感ややりがいが高まる
  • 付加価値の創出:多方面のスキルを活かして新たなサービスや収益源を生み出す可能性が広がる

新潟県の古民家ホテルの事例

新潟県南魚沼市にある古民家ホテルでは、スタッフ一人ひとりが「民謡を歌う」「朝食をつくる」「郷土料理の講師をする」といった複数の役割を兼任し、20年間で売上高を8倍に拡大しました。従業員全体のスキルが多岐にわたることで、少人数でもユニークな体験を提供できるようになり、結果的に高い顧客満足度と安定した賃金水準を実現しています。(日本経済新聞 2025年3月24日掲載「1人3役の旅館、売上高は8倍 多彩な経験積ませ人材定着」より)


筆者が実践した「誰でも休みやすい職場づくり」

気兼ねなく有給を取れる取り組み

私が以前勤めていたタクシー会社では、総務部の事務員さんが4名在籍し、それぞれが「会計係」「業務係」「日報整理係」など明確に分担されていました。
しかし、「全員が好きな時に有給休暇を取れるようにしたい」というわたしの理想を実現するには、誰が休んでも業務が滞らない体制が必要です。そこで取り組んだのが、多能工化でした。

2〜3年ごとに担当をローテーション

  • ステップ1:最初の2〜3年で自分の担当業務を覚える
  • ステップ2:次の2〜3年でさらに別の担当業務を習得
  • 最終的なゴール:6〜8年かけて全員がすべての業務を一通りこなせるようにする

この仕組みによって、誰かが急に休んだとしても、その人の役割を他のメンバーが引き継げるようになりました。結果的に、「自分がいないと仕事が回らない」という不安がなくなり、全員が安心して休暇を取れる職場に変わったのです。


多能工化を成功させるためのポイント

1. 段階的な研修制度とキャリアパス

多能工化を進めるには、段階的にスキルを習得していく研修制度が欠かせません。初級・中級・上級といったステップをわかりやすく提示し、「上級まで習得すれば昇給や手当がある」など、明確なキャリアパスを用意するとモチベーションが高まりやすくなります。

2. コミュニケーションとフォロー体制の強化

業務範囲が広がると、どうしても混乱やストレスが発生しがちです。定期的に面談やチームミーティングを行い、困ったことがあれば早めに相談できる環境を整えましょう。外部コンサルタントの活用や専門家による研修も有効です。

3. IT化・自動化による業務効率化

多能工化を成功させるためには、従業員がより付加価値の高い業務に集中できるよう、書類作成や予約管理などの単純作業をできるだけITツールで自動化することが重要です。クラウドソフトや生成AIなどを導入し、「雑務に追われて休めない」という状況を防ぎましょう。


まとめ

多能工化は人手不足を補うだけでなく、従業員のやりがいと安心感を生み出す仕組みでもあります。新潟県の古民家ホテルのように、複数のスキルを習得したスタッフがサービスを多面的に提供することで業績が大きく伸びた事例もあれば、筆者のタクシー会社での体験談のように「誰でも気兼ねなく休める」職場を実現するケースもあります。

限られたリソースを最大限に活かしながら、従業員一人ひとりが成長と働きやすさを感じられるのが多能工化の魅力。これからの時代、中小企業の経営者が考えるべき重要な戦略と言えるでしょう。


自分がいないと仕事が回らない」という不安を解消するために

  1. まずは業務の棚卸しをしてみましょう
    どんな仕事があるのか、誰が担当しているのかをリスト化し、重複や属人化している作業がないかをチェックしてください。
  2. 小さなローテーションから始めてみる
    いきなり全業務を共有するのは負担が大きいもの。まずは週に1回、月に1回など、小規模なローテーションで「複数業務を知る機会」を作ってみましょう。
  3. 研修制度やITツールの導入を検討する
    多能工化が進むと、教育コストや管理の手間が増えがちです。クラウドソフトや専門家の力を借りて、効率的に業務を回す仕組みをつくりましょう。

従業員が安心して休める環境を整えながら、人材不足に対応し企業を成長させる──。多能工化は、そのための有力なアプローチです。ぜひ一歩を踏み出してみてください。

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サムネイルはAdobe Fireflyでつくりました

この記事を書いた人
おおもと経営オフィス 代表
大本 佳典

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は20,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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