人の心を繋ぎとめるのは、難しい経営理論ではない

失敗からの逆転:経営者の教訓

今から20数年前、私がまだ総務課長だった頃の話です。当時の私は、典型的な勘違い人間でした。部下が資料を期日通りに作成すること。他部署がこちらの依頼に協力すること。取引先が無理を聞いてくれること。そのすべてを、「やってもらって当たり前」だと思っていたのです。

課長という役職が、自分を偉くしたと錯覚していたのかもしれません。自分の仕事が円滑に進むのは、周りがそれぞれの役割を果たすからに他ならない。そんな単純な事実から、目をそらしていました。心の中には、「感謝」の二文字はなく、代わりに「当然だ」という傲慢さが、どっかりと居座っていました。

私の周りから「笑顔」が消えていった

変化は、静かに訪れました。最初は、部下との会話から雑談が減ったこと。次に、廊下ですれ違う他部署の社員が、目を合わせなくなったこと。そしてある時、ふと気づいたのです。私の周りから、人の「笑顔」が消えていることに。

報告や連絡といった業務上のやり取りは、滞りなく行われます。しかし、そこには何の感情も乗っていませんでした。まるで、私が血の通わない「役職」という名の機械と仕事をしているようでした。孤立。その言葉が、頭をよぎりました。良かれと思って発する指示や命令が、相手の心を少しずつすり減らし、私自身を孤独な存在へと追いやっていたのです。

組織を動かす最強の言葉は、たった5文字

なぜ、人が離れていくのだろう。一人、デスクで頭を抱えていた時、本当に些細な出来事がありました。掃除の女性が、私の机を丁寧に拭いてくれていたのです。いつもなら、会釈だけして通り過ぎるところでした。しかしその時、なぜか、自分でも不思議なくらい素直に言葉が出たのです。

「いつも、ありがとうございます」と。

その瞬間、彼女の顔に、パッと花が咲いたような笑顔が浮かびました。そして、「いえいえ、課長もお疲れ様です」と返してくれたのです。たったそれだけのやり取りが、乾ききっていた私の心に、じんわりと染み渡りました。

その時、雷に打たれたように気づいたのです。組織を動かし、人の心を繋ぎとめる最強の言葉は、難しい経営理論などではない。「ありがとう」。この、たった5文字の言葉なのだと。当たり前のことなど、一つもない。誰かの働きによって、自分は支えられている。この痛烈な教訓が、その後の私の働き方を大きく変えるきっかけとなりました。

「当たり前」が口癖になっていませんか?社員の心が離れる前に、組織の空気を診断する


ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。

▼ あなたが今日、社内で「ありがとう」と伝えた相手の顔を、具体的に何人思い浮かべられますか?

[サムネールは ChatGPT で作成しました。]

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