通帳に並んだ数字を見て、思わず頬が緩んだのを今でも覚えています。
長いトンネルを抜け、ようやく会社がまとまった利益を出せるようになった。
寝る間も惜しんで働いてきた苦労が、ようやく報われた瞬間でした。
「これで会社は安泰だ」
「俺たちのやり方は間違っていなかった」
私を含め、経営陣はすっかり有頂天になっていました。
まるで、この利益が永遠に続くかのような錯覚に陥っていたのです。
この高揚感と根拠のない万能感が、冷静な判断力をいかに麻痺させるのか、
当時の私は、知る由もありませんでした。
慣れない分野への新規事業進出
「この勢いに乗って、新しい事業を始めようじゃないか」
本業とは全く違う、畑違いの分野への進出。
当然、社内からは慎重な意見も出ました。
「少し拙速すぎませんか?」
「我々には、その分野のノウハウがありません」
「ビジネスの基本は同じだ。今の俺たちなら絶対に成功させられる」
そう豪語して、半ば強引に新規事業はスタートしました。
緻密な事業計画も、将来のキャッシュフロー予測も、今思えば杜撰なものでした。
ただ、「利益が出ているから大丈夫」という一点張り。
新しい人材の採用、機材の購入…。
会社の口座から、景気よくお金が出ていきました。
それは未来への投資というより、ただの浪費に過ぎなかったのです。
結果が出るまで止められない心理
鳴り物入りで始めた新規事業は、全く軌道に乗りませんでした。
慣れない市場で、私たちのやり方は全く通用せず、面白い?ほどに、お金だけが溶けていきます。
頭の片隅では、「これはまずい」と警報が鳴り響いていました。
本業で稼いだ貴重な利益が、日に日に失われていく。
早く損切りをして、撤退すべきだ。
しかし、一度振り上げた拳は、簡単には下ろせませんでした。
「ここまで投資したんだ、今やめたら全てが無駄になる」
「もう少し続ければ、きっと状況は好転するはずだ」
いわゆる、サンクコストの呪縛です。
そして何より、この事業を強引に進めたプライドが、撤退という決断を許さなかった。失敗を認めるのが、怖かったのです。
その結果、傷口はさらに広がり、気がついた時には、あれだけあったはずの利益は食いつぶされたのです。
利益の味を知った高揚感から一転、待っていたのは「どん底」の現実でした。
この失敗から私が学んだのは、ほんの一瞬の成功がもたらす高揚感こそが、最も危険な罠であるということです。
そして、「もうダメだ」と思った時に、いかに早く損切りできるか。その勇気こそが、会社を救うのだということです。
その新規事業、本当に大丈夫ですか?どん底を知る経営参負が、あなたの会社のキャッシュを守ります
ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。
▼ あなたの会社が過去最高の利益を上げたとして、そのお金を「次への投資」に使う前に、まず何をしますか?
サムネールは ChatGPT で作成しました。
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