「専務、例の件、他社に決まったそうです…」
部下からのその報告に、私は言葉を失いました。手応えは十分にあったはずでした。初回の商談は大いに盛り上がり、先方の社長からも「ぜひ前向きに検討する」という言葉をいただいていたのです。私の中には、「これだけ好感触だったのだから、きっと相手はうちのことを覚えているはずだ」という、今思えば甘すぎる思い込みがありました。
しかし、現実は非情です。あの盛り上がった商談の後、私は満足感に浸り、次のアクションを怠りました。一度名刺交換をしても、その後に何の連絡もしなければ、人の記憶から消えていくのは当然のことです。
私は、この「接触する」という営業の基本中の基本を軽視し、一体いくつの仕事を逃してきたのでしょうか。思い出すだけで、今でも冷や汗が出ます。
お客様の記憶に残るための、泥臭い一手間
昔の私は、どこか格好をつけていたのかもしれません。スマートな提案さえできれば、お客様は自ずとこちらを向いてくれる、と。しかし、それは大きな間違いでした。
ビジネスの世界では、忘れられたら、そこで試合終了です。どんなに良い提案も、思い出してもらえなければ存在しないのと同じ。その単純な事実に気づかされた時、私は自分のやり方を根本から改めました。
特に、初見の見込み客に対しては、意識的に接触回数を増やすようにしたのです。もちろん、しつこい営業は嫌われます。大切なのは、そのやり方です。
直接会うことだけが接触ではありません。打ち合わせのお礼を伝える一本の電話。参考になりそうな記事を送る一通のメール。そして、季節の挨拶を伝える一枚のハガキ。そうした、一つひとつは小さく、泥臭いとも言えるような手間を惜しまないこと。
その積み重ねが、「ああ、あそこの大本さんは、気にかけてくれているな」という小さな記憶のフックになり、いざという時に思い出してもらえる存在になるのだと、痛い失敗を経てようやく学ぶことができました。
接触は「量」から「信頼」へと変わる
接触回数を増やすことは、単なる思い出してもらうためのテクニックではありません。それは、「私はあなたのことを、これだけ気にかけています」というメッセージです。
そのメッセージが何度も届くことで、相手の中に少しずつ「信頼」という感情が育まれていく。私はそう信じています。
格好悪くてもいい。泥臭くてもいい。大切なのは、相手の記憶に残り続けるための、誠実な一手間を惜しまないこと。あの日の苦い失注経験が、今の私の営業スタイルの原点になっています。
「忘れられる」前に打つべき一手とは?あなたの会社の営業戦略を、客観的な視点から見直します
ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。
▼最後に名刺交換した、まだ顧客になっていない見込み客を3名思い浮かべてください。その方々との接触が、なぜ途絶えてしまったのだと思いますか?
サムネールは ChatGPT で作成しました。
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