「専務、先日から導入した新しい業務システムですが…現場から少し不満の声が上がっていまして」
信頼する課長からの報告に、私は眉をひそめました。
「何言ってるんだ。あのシステムは、私が練りに練って導入を決めたものだぞ。効率が上がることはあっても、不満なんて出るはずがないだろう」
当時の私は、自分の判断に絶対的な自信を持っていました。
古いやり方に固執する現場が、変化を嫌がっているだけだ。
すぐに慣れるだろう。
そう、たかをくくっていたのです。
私は、課長からの進言をまともに取り合わず、「しっかり説明して、現場を納得させるのが君の仕事だろう」と、逆に彼を叱責する始末でした。
現場の社員たちが、日々の業務の中で何を感じ、何に困っているのか。
その生の声に耳を傾けることすらせず、自分の正しさを疑いもしなかった。
その私の驕りが、静かに組織を蝕んでいくことに、全く気づいていませんでした。
彼らが本当に心を閉ざした、もう一つの理由
異変は、突然訪れました。
ある日、長年会社を支えてくれていたベテラン社員を含む、数名から同時に退職願が出されたのです。
頭を殴られたような衝撃でした。
慌てて引き留めようと面談をしましたが、彼らを翻意させることはできませんでした。
辞めていく一人が、諦めたような目で私にこう言いました。
「専務、もういいんです。新しいシステムが使いにくいとか、そういう問題じゃないんです」
「私たちは、やり方を変えてほしかったんじゃありません。ただ、私たちの話を、一度でいいから真剣に聞いてほしかっただけなんです」
その言葉に、私はハッとしました。
彼らが本当に心を閉ざしたのは、システムの使い勝手ではありませんでした。
現場の小さなSOSを「不満」だと決めつけ、一方的に黙らせようとする、私の「姿勢」そのものだったのです。
自分たちの経験や意見がないがしろにされ、ただの駒として扱われている。
その無力感が、彼らのやる気を削いでしまったのです。
耳の痛い進言は、会社の欠点を教えてくれる「宝の山」
会社にとって、最も価値のある社員たちが去っていく。
その手痛い失敗で、私は自分の過ちを骨の髄まで思い知らされました。
そして、この経験が何よりも大切な教訓を私にくれました。
それは、現場からの「耳の痛い進言」こそ、会社を潰さないための「宝の山」だということです。
経営者という立場になると、どうしても現場から遠くなります。
だからこそ、私たちが気づけない組織の歪みや問題点を、社員たちは肌で感じ取っている。
彼らが勇気を出して伝えてくれる声は、決して「文句」や「不満」などではありません。
会社を良くしたいという、彼らの切実な願いなのです。
この一件以来、私は何よりもまず、社員の声を聴くことを徹底しました。
どんな小さな意見でも、決して頭ごなしに否定しない。
「ありがとう」と、まずは感謝を伝える。
たったそれだけのことが、組織の風通しを劇的に変えることを、私は身をもって知りました。
社員からの「耳の痛い進言」を、未来への投資に変えたいあなたへ
ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。
▼ あなたが最後に、社員の意見に対して「私が間違っていた」と、素直に認めて感謝を伝えたのはいつですか?
サムネールは ChatGPT で作成しました。
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