私が以前の会社に勤めていた頃、ある知り合いの社長の姿が今でも強く心に残っています。「社長はこうあるべきだ」という見えない鎧を、誰よりも分厚く着込んでいるような人でした。周りからはエネルギッシュなやり手と見られていましたが、当時の私は、彼のその姿にどこか危うさを感じていました。
事業が軌道に乗ると、彼は誰もが知る高級車に乗り換え、立派なオフィスを構えました。取引先としてそのオフィスを訪れるたび、成功者の象徴のような空間に圧倒されつつも、同時に違和感を覚えたものです。私自身、後に会社経営で「見栄」や「過度な楽観」という罠に陥るわけですが、その時の彼は、まさにその道を突き進んでいるように見えました。弱みを見せられないプライドが、彼を孤独にし、判断を鈍らせていることに、まだ誰も気づいていませんでした。
重くのしかかる固定費と、社員の冷ややかな目
しばらくして、彼の会社の社員と話す機会がありました。聞こえてきたのは、社長の華やかな姿とは裏腹な、厳しい内情でした。膨れ上がった固定費が経営を圧迫し、ボーナスカットや経費削減が続いているというのです。
社員たちは、自分たちの頑張りが社長の見栄のために使われていると感じていました。立派なオフィスで交わされる社長の威勢のいい言葉は、彼らの心にはもう響いていませんでした。
外から見ていても、以前のような活気は失われ、社員たちの目にどこか冷ややかな光が宿っているのがわかりました。この光景は、後に私が自身の会社で「人を大切にしない経営の脆さ」を痛感した時の記憶と重なり、今でも胸に突き刺さっています。どんな立派な箱を用意しても、人の心が離れてしまえば、組織は静かに崩壊していくのです。
失敗から学んだ、会社の価値を「見せる」のではなく「創る」ということ
その後、風の噂で彼の会社が大変な状況にあることを聞きました。そして数年後、偶然にも私は彼と再会したのです。しかし、そこにいたのは、以前の彼とはまるで別人のように、穏やかで、地に足のついた表情の経営者でした。
彼は、見栄とプライドで全てを失いかけ、どん底を味わったと話してくれました。高級車を手放し、オフィスを身の丈に合った場所に移したこと。そして何より、社員全員に頭を下げ、自分の過ちを正直に詫びたこと。その経験を通して、会社の本当の価値は外見ではなく、中身にあると気づいたそうです。社員との信頼関係、お客様からの感謝、そしてどんな逆境にも負けない組織。それらを地道に「創る」ことこそが経営なのだと、彼は語ってくれました。
見栄の鎧を脱ぎ捨てた彼の姿は、以前よりずっと大きく、頼もしい経営者に見えました。この経験は、私が「伴走型の経営参謀」として経営者の心に寄り添うことの重要性に気づいた、大きなきっかけの一つとなったのです。
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