「うちの会社、なぜか期待している優秀な若手ばかり辞めていくんだよ…」。最近、ある経営者と話していると、そんな溜息まじりの相談を受けることが増えました。
給料や待遇に極端な不満があるわけでもない。むしろ、熱心に仕事に取り組んでくれていたはずなのに、ある日突然、退職届を手に「一身上の都合で」と告げられる。
その目はどこか遠く、本心が見えない。この状況、私も痛いほどよく分かります。
かつて私が経営に携わっていた会社がどん底に向かっていた時、社員たちの心は静かに、しかし確実に離れていっていました。彼らは不満を爆発させるのではなく、ただ黙って会社を去っていくのです。
その「声なき叫び」に気づけなかった後悔は、今でも私の胸に突き刺さっています。
良かれと思ってやっていた3つの勘違い
経営者というのは孤独なものです。だからこそ、自分の信じるやり方で社員を引っ張っていこうと必死になります。しかし、その「良かれと思って」が、実は若手の心を蝕む「やりがい搾取」になっているとしたら…。
ここで、多くの経営者が陥りがちな3つの勘違いを、自戒を込めてお話ししたいと思います。
一つ目は、「『やりがい』があれば大丈夫」という思い込み。確かに仕事のやりがいは大切です。しかし、それを盾に長時間労働や曖昧な評価を正当化してはいけません。
二つ目は、「背中を見て育て」という古い価値観の押し付け。自分がそうやって育ってきたからといって、同じ方法が今の若者に通用するとは限りません。彼らはもっと丁寧なフィードバックと、明確な成長の道筋を求めています。
そして三つ目が、「社長の夢」だけを一方的に語ってしまうこと。あなたの熱い想いは本物でしょう。しかし、その夢に社員たちが「自分の未来」を重ねられなければ、それはただの独り言になってしまうのです。
明日から試せる、若手の心をつなぎとめる処方箋
では、どうすれば優秀な若手の心をつなぎとめることができるのか。何も、大掛かりな制度改革から始める必要はありません。
大切なのは、経営者であるあなたが、彼ら一人ひとりに「個人」として向き合う姿勢を示すことです。まず、週に一度でもいい、5分でいいから「キャリアについてどう考えてる？」と聞くための1on1の時間を設けてみてください。仕事の進捗確認ではなく、彼の人生の話を聞くのです。
次に、小さなことで構わないので「この件、君に任せるよ」と裁量を与えてみてください。信頼されているという実感は、何よりのモチベーションになります。
そして最後に、当たり前かもしれませんが、「ありがとう」という感謝を言葉と行動で示すこと。私もかつてはこれができませんでした。人を大切にしない経営が、どれだけ脆いものかを痛感したからこそ、今、声を大にして言いたいのです。
社員の未来と会社の未来は、決して別々のものではありません。その二つが重なる点を見つけ、共に未来を描いていくことこそが、経営者にとって最も重要な仕事なのだと、私は信じています。
優秀な若手の心が離れる前に、共に「働きがい」を育む経営参謀サービス
ビジネスコーチ大本から今日の問いです。
▼もし、あなたが今日会社を辞めていく若手社員本人だとしたら、最後の日に社長である「あなた」に、本当は何を伝えたかったと思いますか？
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