会社の経営が傾き、日に日に空気が重くなっていく。そんな頃でした。タクシーの駐車場で顔を合わせるたび、私にあれこれと意見をしてくる一人のドライバーがいました。
ベテランの彼が口にするのは、いつも耳の痛いことばかり。「専務、最近のお客さんはこう言ってますよ」「このやり方じゃ、リピーターは増えません」と。当時の私にとって、彼の存在は正直、煙たいだけでした。
ただでさえ資金繰りや銀行交渉で頭がパンクしそうなのに、なぜ現場の一人の声にまで耳を傾けなければならないのか。私は彼の言葉をまともに受け止めず、「はいはい、わかったよ」と、いつも右から左へ聞き流していました。彼の指摘が、お客様の視点に立った紛れもない「正論」であることにも気づかずに。いや、本当は心のどこかで気づいていたのかもしれません。ただ、それと向き合うのが怖かったのです。
プライドという名の耳栓が、潰した未来
なぜ、私は彼の貴重な意見を無視し続けたのか。今なら痛いほどわかります。それは、私のちっぽけなプライドと、経営者としての未熟さでした。「現場のことは自分が一番わかっている」という根拠のない自信。そして、これ以上問題点を突きつけられて、自分の無力さを認めたくないという恐怖。そんな感情が、私の耳に分厚い耳栓をさせていたのです。
私は、自分を肯定してくれる「心地よい言葉」だけを求め、イエスマンばかりを周りに置いていました。その結果、失ったものはあまりにも大きかった。現場で起きている小さな綻び、お客様が感じていた不満、そうした会社を蝕む静かなサインを、私は完全に見過ごしてしまったのです。彼が鳴らしてくれていた警鐘に耳を塞いだ代償は、会社の信用失墜という、取り返しのつかない形で跳ね返ってきました。
今なら、お金を払ってでも聞きたい言葉がある
どん底を経験し、すべてを失ってから、私は何度も彼のことを思い出しました。そして猛烈に後悔するのです。あの時、なぜ素直に「教えてくれてありがとう」と言えなかったのかと。
経営者にとって、耳の痛い「異論」や「苦言」こそが、進むべき道を照らす光になります。それは、会社を破滅から救う、何物にも代えがたい宝物なのです。この手痛い失敗があるからこそ、私は今、経営者の隣で「耳の痛いこと」を伝える役割を自らに課しています。
もしあなたが今、心地よい言葉だけに囲まれて、一抹の不安を感じているのなら、どうか思い出してください。あなたの会社の未来を本当に案じている人ほど、厳しいことを口にしてくれるものだということを。
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