「聴く力」~コミュニケーションの本質は、スキルじゃない~

失敗からの逆転:経営者の教訓

「もっと社員とコミュニケーションを取らないと…」

頭ではわかっている。でも、何から話せばいいのかわからない。そもそも、日々の業務に追われてそんな時間もない。多くの経営者の方が、そんなジレンマを抱えているのではないでしょうか。

何を隠そう、かつての私もそうでした。いえ、もっと酷かったかもしれません。コミュニケーションとは、自分の考えをいかに正確に伝え、相手を動かすかだと思い込んでいました。結果、どうなったか。会社は倒産。私は「人を大切にしない経営の脆さ」を、骨の髄まで味わうことになりました。

今日は、そんな私がどん底から這い上がる中で気づいた、コミュニケーションの本質についてお話ししたいと思います。これは小手先のテクニック論ではありません。あなたの会社を、そしてあなた自身の心を守るための、いわば「経営の土台」となる考え方です。

コミュニケーションの目的は「関係性」を育むこと

まず、大前提として、コミュニケーションは何かを伝える「手段」である前に、相手との「関係性」を育むためのものです。特に、一見無駄に見える「雑談」。これこそが、社員の心に「この会社にいていいんだ」「社長は自分のことを気にかけてくれている」という安心感を植え付け、信頼関係を築く第一歩になります。資金繰りの状況、取引先の動向、社員のコンディション…本当に重要な情報は、こうした良好な関係性という土壌があって初めて、あなたの耳に入ってくるのです。

「話す」な、「聴け」

では、どうすればいいか。答えは驚くほどシンプルです。それは、「話す」よりも「聴く」ことに意識を集中すること。

経営者という生き物は、孤独です。だからこそ、つい自分の考えや想いを話したくなってしまう。しかし、そこをぐっと堪えて、社員の話に耳を傾けてみてください。コツは、「質問し、褒め、感謝を伝える」こと。そして、「短時間でもいいから続ける」こと。

たとえ興味のない話だったとしても、構いません。話の内容ではなく、その話をしている相手の「感情」や「価値観」に焦点を当てるのです。「この人は、今どんな気持ちでこれを話しているんだろう?」と。それこそが、相手への最大の興味であり、敬意です。

信頼関係は「聴く」ことから生まれる

相手の話を真剣に聴いていると、不思議なことが起こります。相手の中から、自然と「答え」や「やる気」が引き出されてくるのです。人は、自分の考えを評価されずに受け止めてもらえると、安心して本音を話せるようになり、自ら問題解決に向けて動き出します。これこそが「自発性」が生まれる瞬間であり、揺るぎない「信頼関係」が構築される瞬間です。

この「聴く」力を、私は「傾聴力」と呼んでいます。そして、その9割はテクニックではなく、あなたの「あり方」で決まります。評価したり、判断したり、ましてや途中でアドバイスをしたりしない。ただ、相手を信じて、寄り添い、その言葉も感情も、丸ごと「そうか、あなたはそう感じているんだね」と受け止める。これが何よりも重要です。

もし、相手の話に集中するのが難しいと感じたら、「シャドーイング」を試してみてください。相手が言った言葉を、心の中でそっと繰り返すのです。これだけで、あなたの集中力は格段に高まります。

未来を創る「質問力」と、すべてを支える「承認力」

良い関係性ができてきたら、次は「質問」の出番です。ただし、詰問になってはいけません。「なぜ出来ないんだ?」という過去を責める問いではなく、「どうすれば出来るようになるだろう?」という未来志向の問いを投げかける、コーチングです。具体的で、肯定的で、相手のやる気を引き出すような短い質問は、組織の空気を一変させます。

そして、これらすべての土台となるのが「承認力」です。

私がここで一番強くお伝えしたいのは、「まず、あなた自身を承認してください」ということです。誰よりも会社のことを考え、重圧と闘い、孤独に耐えているのは、社長であるあなた自身です。私も倒産後の苦しい時期、自分を責め続けました。でも、そんな自分を許し、認めてあげられた時から、少しずつ前に進めるようになったのです。

自分を認め、満たして初めて、心から社員を許し、認め、褒め、励まし、感謝することができます。この承認の連鎖こそが、社員一人ひとりの「自信」となり、主体的に考え行動するプロフェッショナル集団を育てていくのです。

コミュニケーションとは、人を動かすための「スキル」ではありません。社員という「人」を心から大切にし、その可能性を信じるという、経営者としての「哲学」そのものです。そして、その実践は、必ずやあなたの会社を強くし、何より、経営者であるあなたの孤独を癒してくれるはずです。

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ビジネスコーチ大本から、今日のコーチングです。

▼ あなたが最後に、評価や判断を一切せずに、社員の話にただ「聴いた」のはいつですか?

サムネールは ChatGPT で作成しました。

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この記事を書いた人
おおもと経営オフィス 代表
大本 佳典

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は20,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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