「この業界は、特殊だから」
これは、かつての私の口癖でした。そして、変化から目を背けるための、実に都合の良い言い訳でした。私たちの会社には、長年培ってきたやり方があり、それが業界の「常識」でした。その常識の中にいれば、物事はスムーズに進むし、誰も文句は言いません。心地よい、ぬるま湯に浸かっているような感覚でした。
異業種の成功事例を見ても、「あれはIT業界だから」「うちはタクシー会社だから」と、自分たちには関係のない話だと片付けていました。新しい技術やサービスの情報が入ってきても、「うちの顧客はそんなものを求めていない」と、ろくに調べもせずに決めつけていました。私たちは、自ら作り出した「常識」という名の壁の内側で、思考停止に陥っていたのです。
黒船が来た時には、もう手遅れだった
変化の兆しは、確実に現れていました。ある日、他府県から、新規参入の会社が現れたのです。彼らのやり方は、私たちの常識からすれば、まさに「非常識」そのものでした。業界の人間は、皆、鼻で笑っていました。「素人に何ができる」「すぐに撤退するだろう」と。
しかし、気づいた時には、市場の景色は一変していました。顧客は、私たちが「非常識」だと切り捨てた、彼らの新しいサービスに熱狂していたのです。接客、価格、利便性。あらゆる面で、私たちは周回遅れになっていました。
「茹でガエル」という言葉があります。熱湯にカエルを入れると驚いて飛び出しますが、水からゆっくりと温度を上げていくと、危険に気づかず茹で上がってしまう。まさに、私たち自身がそのカエルでした。心地よいぬるま湯に浸かっているうちに、市場という鍋は沸騰寸前になっていたのです。慌てて飛び出そうとした時には、もう手遅れでした。
経営者の仕事は、誰よりも先に「非常識」を疑うこと
会社を失い、すべてを失った後で、私はこの失敗の本質を痛感しました。経営者の本当の仕事とは、既存の常識を守り、日々の業務を滞りなく回すことだけではありません。
自社の、そして業界の「常識」を、誰よりも先に疑うこと。
外部から「非常識」に見える挑戦の中に、未来のヒントを見つけ出すこと。
そして、心地よいぬるま湯から、自ら飛び出す勇気を持つこと。
これこそが、変化の激しい時代を生き抜くために、経営者に課せられた最も重要な役割なのです。あなたの会社は、心地よい「常識」という名のぬるま湯に、浸かりすぎてはいませんか?
「うちの業界は特殊だから」と感じたら、それは危険のサインかもしれません
ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。
▼ あなたが、ここ1年で「業界の常識だから」という理由だけで、検討すらせずに却下したアイデアは、いくつありますか?
[サムネールは ChatGPT で作成しました。]
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