節税対策だけの決算書が、あなたの会社の命取りになる

融資

「先生、決算書は税金を払うためだけのものでしょう?」
以前、ある社長に言われた言葉が、今でも私の耳に突き刺さっています。もちろん、税金を正しく納めることは企業の義務です。しかし、その社長の会社は数年後、資金繰りに窮し、銀行からの融資を断られ、非常に厳しい状況に追い込まれました。

経営者の中には、決算書を「過去の成績表」であり「納税額を決めるための書類」だと考えている方もいます。しかし、それは決算書の一つの側面に過ぎません。いざという時、会社の未来を左右するのは、もう一つの側面、すなわち「会社の健康状態を伝え、未来の信頼を勝ち取るための診断書」としての一面なのです。特に、金融機関は、この「診断書」を隅々まで読み解き、あなたの会社を「応援したい」と思うか、「見送るべき」かを判断しています。

銀行員が必ず見る「3つの数字」の裏側

銀行員が融資審査の際に決算書で何を見ているか、あなたはご存知でしょうか。彼らは魔法使いではありません。公開されている客観的なデータ、つまり決算書の数字から、会社の「安全性」「収益性」「成長性」を読み取ろうとします。彼らが特に注目するのは、以下の3つのポイントです。

まず「自己資本比率」。これは会社の体力を示す最も基本的な指標です。しかし、ただ高ければ良いというものではありません。大切なのは、その中身です。毎年の利益がきちんと積み上がった結果としての自己資本なのか、それとも、ただ単に社長個人からの借入金で膨らんでいるだけなのか。銀行は、その背景にあるストーリーまで見抜こうとします。

次に「債務償還年数」。これは、有利子負債を何年分の利益で返済できるかを示す指標です。これが短いほど、返済能力が高いと評価されます。しかし、ここにも落とし穴があります。無理な節税で利益を圧縮しすぎていませんか?納税を恐れるあまり、会社の返済能力を自ら低く見せてしまっては、本末転倒です。

そして最後に「キャッシュフロー」。結局のところ、会社は現金がなくなれば終わりです。どれだけ帳簿上で利益が出ていても、手元にお金がなければ黒字倒産のリスクさえあります。銀行は、営業活動でどれだけ現金を稼ぎ出せているか(営業キャッシュフロー)を厳しくチェックし、会社の「稼ぐ力」そのものを評価しているのです。

「自己資本比率」よりも大切な、もう一つの指標

これらの数字はもちろん重要です。しかし、私が自身の失敗経験と数多くの企業支援を通して痛感しているのは、これらの財務指標以上に銀行が重視している、もう一つの「見えない指標」の存在です。

それは、経営者の「誠実さ」と「意志」です。

決算書は、ただの数字の羅列ではありません。そこには、経営者の思想が滲み出ます。例えば、毎年の利益を正直に計上し、きちんと納税した上で、内部留保を厚くしている決算書。それは、目先の利益に惑わされず、長期的な視点で会社の安定を考えている「誠実さ」の表れです。

また、融資を申し込む際に、ただ「お金を貸してください」と頭を下げるのではなく、自社の現状を正確に把握し、課題を認識した上で、「この資金をこう活用し、会社をこう成長させたい」という具体的な計画と熱意を語れるか。その「未来への意志」こそが、銀行員の心を動かし、「この会社を応援したい」と思わせる最後の決め手になるのです。私が会社を潰した時、この視点が完全に欠けていました。目先の資金繰りに追われ、未来を描く余裕も、それを語る言葉も持っていなかったのです。

次の決算から間に合う、銀行評価を上げるための準備

「もう、うちの決算書は手遅れだ…」そう思った方もいるかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早い。決算は毎年やってきます。次の決算から、あなたの会社の評価を確実に上げるための準備を始めるのに、遅すぎるということはありません。

まずは、顧問税理士とじっくり話す時間をとってください。そして、「節税」のためだけでなく、「会社の信頼性を高める」という視点で、決算の方針を一緒に考えてみてください。どの勘定科目をどう整理すれば、銀行からの見え方が変わるのか。専門家の知恵を借りるのです。

そして何より、あなた自身の言葉で、会社の未来を語れるようになってください。なぜ、この事業をやっているのか。5年後、どんな会社にしたいのか。そのために、今、何が必要なのか。その「強い想い」こそが、どんな立派な数字よりも雄弁に、あなたの会社の価値を語ってくれるはずです。

一人で抱え込む必要はありません。私も、数々の失敗を経て、ようやくそのことに気づきました。あなたの会社の「診断書」を一緒に読み解き、未来への処方箋を描く。そんな「経営参謀」が、あなたの隣にはいます。

あなたの会社の「健康診断」、信頼できる経営参謀と始めませんか?


ビジネスコーチ大本から、今日のコーチングです。

▼もし、あなたが銀行の融資担当者だとしたら、今のあなたの会社の決算書を見て、「この会社になら、上司を説得してでも融資したい」と思えますか?

サムネールは ChatGPT で作成しました。

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この記事を書いた人
おおもと経営オフィス 代表
大本 佳典

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は20,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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