まだ20代だった頃、以前在籍していた会社で、管理職に抜擢された人が長続きしないことがありました。
どうしてそうなるのか、当時の私には訳がわかりませんでした。「管理職になった人のワガママかな」と思ったものです。
その会社では、「役員にとって都合よく動いてくれる人」を管理職に取り立てていました。その人の能力や経験は関係なく、役員の好みが選考基準でした。
いまならわかります。当時の役員は、「人を生かす」人事ではなく、「自分に都合のいい」人事をしていました。
総務の責任者だった頃、お客様向けのニュースレターを作ろうという話になったことがあります。広報は総務の担当だったので、誰に書いてもらおうかと思案した結果、若手の事務員さんにお願いしました。
その人は社交的でネアカで、いろいろなことに興味を示す人でした。ドライバーさんともよく会話をしていて、社内での取材にはうってつけだと判断したのです。
ニュースレターは手書きで、四方山話や生活の豆知識、ドライバーさんへのインタビューなどを、本人が一人で取材して作りました。文章は決して上手とは言えませんでしたが、読むと一生懸命さが伝わってきます。
お客さんからの反応は上々で、感想がハガキで来ることもありました。そうなると本人もやる気に拍車がかかり、版を重ねるごとに内容が良くなるという好循環が続きました。
上司の役割は、部下を思い通りに動かすことではありません。部下の可能性を引き出して、成果を上げられる機会を用意することです。
私は、相手の立場で一緒に考え、その人の持ち味が生きるようにすることを、相手への奉仕だと考えています。そのためには、相手の思いを聴くことと、必要な意見を伝えることの両方が大切だと思います。
ある事務員さんは、もともと社交的であることは分かっていました。事務職なので、タクシードライバーさんと交流する場面は非常に少ないのですが、クリスマスが近づいたときに、その事務員さんが「休憩室にクリスマスの飾り付けをしよう」と言い出したことがあります。とても素晴らしいアイデアだなと思いました。
ちょっぴりですが予算を割いて、一切口出しはせずに「やってみてください」とお願いをしたところ、その人がほかの事務員さんと共同で休憩室の飾り付けをしてくれて、休憩室が明るい感じになって、すごく良くなりました。
その頃は、突然予算を捻出するのもなかなか厳しい時期でした。それまでだったら、「ちょっと保留にします」とお断りしていたかもしれません。
ただ、少しでも社内が明るくなるいい取り組みだと思いましたし、その人にもぴったり合う仕事だと思ったので、やってもらいました。社員さんやドライバーさんが喜ぶことをする、ということです。
部下の持ち味を一つ挙げるとしたら、何ですか。

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