先日、新聞にこんな記事が載っていました。
アパレル向けのAIを作っているN社が、ファッションの流行を予測するAIの精度を大きく上げた。3カ月先の流行を、誤差5%で当てられるようになったそうです。半年先でも15%。少し前まではそれぞれ15%、30%ずれていたと言いますから、なかなかの進歩です。
ここだけ読むと、「へえ、AIってすごいな」で終わってしまいます。わたしも最初はそう思いました。
ただ、記事を読み進めて、目が止まった一文があったんです。
【すごいのはAIじゃなくて、その手前だった】
そこの社長さん方が、こう言っていました。「2018年ごろからファッション関連のデータを、独自に溜めてきた」と。
つまり、最新のAIをポンと買ってきたから当たるようになったわけじゃない。インスタの投稿、販売店の売れ筋、コレクションの画像。そういうものを、何年もかけてコツコツ蓄えてきた。その山があったから、AIが意味を持った。
順番が逆なんです。すごいAIがあったから強いのではなく、地味なデータが積んであったから、AIが活きた。
【わたしも、ここをよく取り違えます】
正直に言うと、わたし自身、新しいツールが出るとすぐ飛びつくクセがあります。Claude Codeが出た、Antigravityが出た、次はこれだ、と。道具の新しさに、つい目移りしてしまう。
でも、道具を替えても、中に入れる材料が薄ければ、出てくるものも薄い。何度か空回りして、ようやく分かってきました。強いのは、新しい道具を持っている人ではなく、その道具に食わせる「自分だけの何か」を持っている人なんですね。
【あなたの会社の”7年間のデータ”は、どこにありますか】
ここで、中小企業の社長さんに少し立ち止まってほしいんです。
何年ぶんもの注文リスト。クレーム対応の記録。「あのお客さんはこれを嫌がる」という、ベテラン社員の頭の中。日報の束。これ、全部あなたの会社の「7年ぶんのデータ」です。
大手はお金でAIを買えます。でも、あなたの会社が現場で溜めてきた、その泥くさい記録だけは、お金では買えません。真似もできない。ドラッカーはこれを「取りに来られない場所を作る」戦略と呼びました。小さい会社が生き残る、王道です。
新しいAIを入れるより先に、やることがあるのかもしれません。溜めてきたものを、捨てずに、使える形にしておくこと。宝の山は既に社内にあります。
あなたの会社で、いちばん長く積み上がっている「資産」は、何ですか?
