「発見される会社」の作り方

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赤いポストを撮る若者たち

先日、ある経済紙のコラムで「カラーハンティング」という遊びを知りました。

やり方は単純です。友達と街に出て「今日は赤」「私は青」と色を決める。あとはひたすら歩いて、自分の色を見つけて写真に撮る。ポスト、看板、自販機のボタン、壁のシミ。撮ったものを最後に並べて見せ合う。それだけ。

「どこが面白いんだ?」と思う方もいるでしょう。正直、私も最初はそう思いました。

でも、少し立ち止まると、ここに今の消費者の感覚を読み解くヒントがある。しかも、そのまま中小企業の集客の話につながっていくのです。

「上手な写真」より「面白い見つけ方」

ほんの数年前まで、写真の価値は「どれだけ綺麗に撮れたか」で決まっていました。映える料理、映える景色、映える自分。完璧に加工した一枚を並べて、いいねを競う。そういう世界でした。

ところが今、若い世代の写真の使い方はまるで違います。

SHIBUYA109 lab.の2025年の調査では、Z世代のInstagram利用率は約9割。ただし投稿の中心は、24時間で消える「ストーリーズ」だそうです。不特定多数に見せる「作品」ではなく、仲間内で流れていく「会話のきっかけ」として写真を使っている。

飾れば飾るほど、信用されなくなってきた。

これは写真だけの話ではありません。AIが作った画像や文章があふれた結果、「整いすぎたもの」を、人はどこか身構えて見るようになりました。整えると疑われ、少し崩すと親しまれる。今の消費者の感覚は、この逆転の中にあります。

中小企業の本質は「撮られる」から「見つけられる」へ

カラーハンティングを見ていて、私が一番「これは経営の話だ」と思ったのは、被写体の選ばれ方です。

この遊びで撮られるのは、観光名所でもおしゃれなカフェでもありません。道端の消火栓、古びた看板、駐車場の矢印。普段は誰も見ない、ありふれたものばかりです。

つまり、被写体の「すごさ」は関係ない。大事なのは、見る側が持っている「探し方のルール」のほうです。「赤を探す」というルールがあるから、赤い消火栓に目が止まる。ルールがなければ、そのまま通り過ぎてしまう。

これ、そっくり商売に置き換えられます。

目立つ看板を作ることが集客なのではない。「あ、見つけた」と思わせる小さな差を、どこかに仕込んでおく。それがこれからの集客です。

大手チェーンは、どの街でも同じ外観、同じメニュー、同じ接客でそろえます。それはそれで強い。でも、「見つける楽しさ」はゼロです。壁の色が少し違う、ドアの取っ手が面白い、手書きのメニューがある——そんな小さな差が、今の消費者には宝探しのヒントになります。

旭川の、黄色い食堂

旭川の近くに、民家を改装した食堂があります。

外観は黄色。雪の中で目立つイエローです。普通の家の玄関で靴を脱いで、下駄箱にしまう。廊下のドアを開けると、壁も天井も白く塗られた茶の間。その白はプロの仕事ではなく、マスターとスタッフが手作業で塗ったものだそうです。

大きなテレビ(地方の家によくある光景です)が置かれた座敷に、どこの家にでもあるテーブルと椅子が並ぶ。メニューは手書き、壁のおすすめも手書き、レジ横のドレッシングのポップまで手書き。「整然と綺麗に」とは正反対の手作り感。これがいいのです。

すっかりファンになってしまいました。(お店:愛別食堂・愛別民泊 遠近(おちこち)

実務でどう考えるか——3つの視点

①店の外観は「広告」ではなく「観察を誘う仕掛け」と考える。巨大な看板を出すより、壁の色のアクセント、手書き文字、古びた素材感、少し変わった案内表示。「あれ?」と目を止める要素を仕込むほうが、今は反応が返ってくることがあります。若い世代は「説明された見どころ」より「自分で見つけたネタ」を好みます。外観は「いかに目立つか」ではなく「いかに気づかせるか」で設計する。

②イベントは「消費」より「探すルール」を渡す。商店街なら「赤いものを5つ見つけて投稿」「昭和フォントを探す」「丸い看板だけ集める」。こういう企画は、チラシ一枚とSNSアカウントがあれば始められます。大きな予算はいりません。名所を一発ドンと見せるより、歩きたくなる「見方」を渡したほうが、滞在時間も回遊も伸びます。

③SNS発信は「完璧な一枚」だけでは弱くなる。プロが撮った商品写真、整った広報素材。それ自体は悪くありません。ただ、それだけだと「作り物感」が出る。整えた中に、現場の素の一枚を意図的に混ぜる。あなたの会社のSNS、最後に「飾らない現場の写真」を載せたのはいつでしょうか。

最初の一歩

難しく考えることはありません。

明日、自分の店の前に立って、スマホを構えてみてください。「もし自分が初めてこの店を見る若い客なら、何に目が止まるだろう」と考えながら。

写真を撮りたくなる何かがあるか。それとも、綺麗だけれど、何も引っかからないか。その答えが、今の時代に合った集客のスタート地点になります。

まとめ——見つける力が、娯楽になった

カラーハンティングは、単なる写真の流行ではありません。観察そのものが遊びになり、撮影はその証拠と会話の道具になった。そういう変化のあらわれです。

昔の「写真を撮る」は、対象を保存する行為でした。今の「写真を撮る」は、対象に意味を与える行為に近い。

「上手さ」より「見つけ方」。「すごい被写体」より「面白い視点」。大きな広告を打つより、小さな「発見のタネ」を仕込む。完璧な発信より、素の現場を少し見せる。

目の前にあるものの中に、発見の喜びを仕込めるかどうか。商売の工夫とは、結局そこなのだと思います。あなたの店には、お客さんが「あ、見つけた」と思える何かがありますか。今日、一つだけ考えてみてください。

自分の店の「発見のタネ」がどこにあるか、一人だと案外見えないものです。お店の”見つけられる強み”を一緒に探しませんか。外からの目線で、お手伝いします。

ビジネスコーチ大本から、今日の質問です。

▼ あなたのお店で、お客さんが思わず写真に撮りたくなる場所は、どこですか。一つも思い浮かばないとしたら、それはなぜでしょう。

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この記事を書いた人

大本佳典【公式】 / Yoshinori Oomoto
おおもと経営オフィス 代表
1993年より企業経営に携わる、「経営者の心に寄り添う経営コンサルタント」
[経歴と実績]
経営戦略立案、融資サポート、ビジネスコーチングの専門家。年間のセミナーなど登壇回数は100本超え。
北海道中小企業総合支援センター登録専門家、北海道商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、北海道商工会連合会エキスパートバンク登録専門家として活動。
[趣味]
美味しい料理と日本酒を楽しむこと、写真撮影。
北海道を愛車の MINI COOPER で走り回ること。年間走行距離は30,000km超。
[ブログについて]
経営者の皆様に寄り添い、実践的なビジネス戦略や心構えについて発信してます。
失敗と復活を経験した視点から、北海道の企業の成長と発展に少しでも貢献できたら嬉しいです。

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