「なんで、俺だけがこんな目に…」深夜のオフィスで、たった一人
「もう、全部やめたい」
深夜のオフィスで、パソコンの明かりだけを頼りに一人、そう呟いた経験はありませんか。資金繰りのプレッシャー、思うように育たない社員、離れていく顧客…。経営者という立場は、傍から見るほど華やかなものではなく、むしろ出口の見えない暗いトンネルを一人で歩き続けるような、孤独な戦いの連続です。
特に、真面目で、責任感が強く、誰よりも会社の未来を案じている社長ほど、燃え尽き症候群という見えない敵に心を蝕まれやすいものです。その苦しみは、他人事ではありません。私自身が、その暗闇のど真ん中で膝を抱えた一人なのですから。
すべてを失った日、私を支えた「たった一つの問い」
ご存知の方もいるかもしれませんが、私はかつて経営陣の一人として関わっていた会社を倒産させました。文字通り、すべてを失うという「どん底」です。再起を誓っても仕事はなく、アルバイトで食いつなぐ日々。当時は、社会から見放されたような無力感に苛まれました。
そんな絶望の中で、私が毎日自分に問いかけ続けたことがあります。それは、非常にシンプルで、しかし魂の根幹を揺さぶるような問いでした。
「そもそも、自分はなぜこの仕事を始めたんだろうか？」
利益のため？名声のため？もちろん、それもあったかもしれません。しかし、心の奥底を掘り下げていくと、もっと純粋な、青臭いと笑われるような情熱がそこにはありました。「もっとお客様に喜んでほしかった」「社員が誇れる立派な会社にしたい」。その原点に立ち返った時、失ったものばかりに囚われていた視界に、進むべき道筋がうっすらと見えてきたのです。
「やめる」は思考停止、「何を変えるか」が未来への一歩
心が折れそうな時、「やめる」という選択肢は非常に魅力的に見えます。すべてをリセットできれば、この苦しみから解放されるのではないか、と。しかし、それは思考停止に他なりません。問題から目を背けるだけで、何も解決はしないのです。
本当に考えるべきは、「やめるか、続けるか」の二択ではありません。「今の状況を好転させるために、何を変えるべきか」です。この問いに切り替えた瞬間、思考は過去への後悔から、未来への創造へとシフトします。
それは、たった一つの商品かもしれない。たった一人の顧客との関係性かもしれない。あるいは、朝の挨拶の仕方という、ごく些細なことかもしれません。しかし、その「変化」こそが、分厚い氷を割る最初の一撃になるのです。
あなたの情熱の炎を、一人で守り抜く必要はない
創業時の、あの燃えるような情熱。それは、あなたのビジネスの核であり、最も尊い資産です。ですが、その炎をたった一人で、風雪に耐えながら守り続ける必要はありません。時には、誰かの力を借りて風除けを作ったり、薪をくべてもらったりしたっていい。
孤独を感じた時、心が折れそうになった時こそ、あなたの情熱の原点を理解し、共に未来を考えてくれる「参謀」の存在が不可欠です。客観的な視点は、あなたが見失っていた選択肢を照らし出し、伴走者としての励ましは、再び立ち上がる勇気を与えてくれるはずです。あなたの価値は、今の苦しみだけで決まるものではありません。その情熱の炎を、どうか消さないでください。
今日の記事が、あなたの心に少しでも火を灯すきっかけになればと願っています。
ビジネスコーチ大本から今日の問いです。
もし明日、すべての制約がなくなったとして、「創業したての頃のあの情熱」だけを頼りに仕事をするとしたら、あなたはまず、何から始めますか？
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